矯正歯科コラム
COLUMN矯正治療ができないケースについて

子どもから大人まで、幅広い年代で治療を進める方が増えている歯科矯正治療ですが、実は矯正治療を行なうことができないケースもあります。今回は、矯正治療が難しい状況について解説していきます。
重度の歯周病や外科手術が必要なケース
歯の矯正治療は、歯列が乱れた歯を少しずつ動かして歯並びを整えていくものです。その際、歯を支えている骨(歯槽骨)と、歯と骨の間のクッションの役割を担う歯根膜を少しずつ再形成していく形で歯を正しい位置に定着させます。
しかし重度の歯周病に罹患している場合、歯周病菌によって歯槽骨が溶けてしまっていることがあります。歯槽骨が溶けてしまうと歯をしっかりと支えることができず、確実な治療効果を得られないのはもちろん、無理に歯を動かすことで歯を失うリスクまで生じてしまいます。
また、歯周病が軽度であっても、矯正治療により歯を動かすことで歯垢や歯周病菌がすき間に溜まり、健康な組織にも炎症が広がる恐れがあります。そのため、矯正治療を始める前に歯周病を治療しておくことが非常に大切です。歯周病を治療して歯や歯茎の状態を改善しておくことで、矯正治療を始めることができるようになります。また、矯正治療で歯並びが整うと、歯磨きがしやすくなり歯周病予防にもつながるという相乗効果が期待できます。
その他に治療が難しいケースとしては、激しい出っ歯や受け口といった顎の骨格的な要因が関係する場合があります。通常の矯正治療では顎のバランスを整えることはできないため、上下の顎が大きくズレている場合は外科的手術が必要となります。外科的な処置を行なった後に矯正治療を進めることで、歯並びだけでなく顎のバランスも整い、正しい噛み合わせが実現します。
定期的な通院が難しい状況
矯正治療中は、歯が正しく動いているかの確認など、口腔内の状態をこまめにチェックする必要があります。そのため、通常は1ヶ月に1回程度の定期的な診察が欠かせません。診察が長期間空いてしまうと、思うような治療効果が得られず、治療が長引いてしまう可能性があります。場合によっては初めから治療をやり直す事態にもなりかねません。
定期的な通院が困難な状況で矯正治療を始めるのは難しいですが、ごくたまに診察が2ヶ月空いてしまう程度であれば問題ありません。診察期間については、治療前のカウンセリングで担当医と綿密に相談し治療に取りかかりましょう。
記事監修 深谷矯正歯科 院長 深谷哲郎

■略歴
- 1988年3月 栃木県立真岡高等学校卒業
- 1994年3月 北海道大学歯学部卒業
- 1994年4月 東京医科歯科大学歯学部第2矯正科入局
- 1998年4月 東京医科歯科大学歯学部第2矯正科医員
- 1999年4月 赤坂まつの矯正歯科非常勤勤務
- 2001年4月 ふかや矯正歯科開院
- 2003年4月 船橋市立行田東小学校学校歯科医
■所属学会